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これからの「正義」の話をしよう

統治者の支配を正当化する正義は,どのような内容を持てば普遍的な正義となり,統治は安定したものになるのでしょうか。

そこで,「正義とは何か」について,正義の「判断基準」を考えてみたいと思います。

正義についての3つの考え方を比較してみます。①功利性や福利を最大限にすること(最大多数の最大幸福)②選択の自由と人権の尊重(自由市場主義と個人の尊厳)③美徳の涵養と共通善(美徳を育み,善き生に基づいて判断すること)の3つです。

この3つについて,①を統治者的正義②を人権的正義③を共同体的正義と位置付けることができるとすれば,①は個人の尊厳に薄く,②は集団が持つべき相互扶助の本質に薄いように思えます。

①の功利性や福利による幸福を統治者が判断するとすれば,少数者の幸福と一致しないことがあり,②の個人の尊厳と市場主義はヒトが人となり相互に助け合うという集団が持つ本質的機能を損なうことがあると思うからです。

そこで,①と②の薄さを補う③の立場を基本としながら考えられる正義は,集団が持つべき相互扶助を前提として歴史と伝統を踏まえた個人の客観的自律が尊重される正義です。

①と②の正義を同時代に生きる人々の間の水平的正義,③の正義を過去から現在までの歴史・伝統・自律を含んだ垂直・水平的正義としこれを縦横の正義と考えるところです。

皆さんは,正義とその判断基準をどのように考えていますか,立志学舎で与に学ぶことができることを願っています。

平成28年12月12日

塾長 倉田榮喜