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H29.9.11

「分を知れ」とか「恩を忘れるな」とか言われると,自分を固定されるような気がしたり,恩を押し付けられるように感じたりして,意識的に反発していた頃がありましたが,「分を知ること」も「恩を忘れないこと」も,人生を生き抜きその人生を真正にするためには不可欠なことだと考えられるのです。

人類を含めて,万物が共生する地球生命体の根源価値が「種の尊厳」であると考えていることは既に述べました。

この「種の尊厳」を根本において,人類の命の源に遡ることを「大孝」とするところですが,そのうえで,中江藤樹先生が「万事万物の道理」とされた「孝」は,親子の血脈と家族の絆を具体的に表すものであり,そして,人の集団が原則的に家族の群によって成り立っていることから社会集団の基本価値なのです。

「恩」については,「国の恩」,「師の恩」,「親の恩」と言ったりしますが,人は誰であれこの三恩の中で生かされているのであって,社会集団では一人だけで生きているのではないのですから,三恩に対する感謝の念を持ち続けることは,人生を生き抜き人生を真正に生きるために必要だと言うほかないのです。

「大謝」は,その三恩全部に対する感謝を示すものですが,この大謝を具体的な行動で示すのが個人の分に応じた「奉仕」で,奉仕は,集団の本質である相互扶助に必要不可欠な行動なのです。

故に,「孝」を中心とする価値観に基づいて,三恩に対する大謝を,自分の「分」に応じた「奉仕」として具体的な形で実践していくことこそが,人生の真正な生き方につながるのです。

平成29年9月11日

塾長 倉田榮喜