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H30.3.30本

万物一体の仁は,人も含めた万物の根本は同じであり,万物自他一体とみなす思想で,陽明学の中心的思想とされます。では,万物を自他一体とみなす「仁」とは何のか。

横井小楠先生(1809年~1869年)の「天理は万物の和にあり」との言も含めて思考すれば,「仁」とは,根本が同じである万物の生命体が調和して命を繋ぐ事と考えられます。「仁」は,人間の意思では離合できない天(自然)の摂理と同じであり,いわば「天道」を指すと考えるところです。

これに対して,「義」は,人間の意思で離合できる「人道」で,人間の集団内で己と他者が調和して生きる為の「則」といえます。すなわち,仁と義は,人間の意思で離合できるかどうかの点で決定的に異なるのです。

二宮尊徳先生(1787年~1856年)に,「非は理に勝つ事あたわず,理は法に勝つ事あたわず,法は権に勝つ事あたわず,権は天に勝つ事あたわず,天は明らかにして私なし」の言がありますが,最後は理も法も権も天には勝てないことを知るべきだと思うのです。

万物の一種である人間の義(人道)は,仁(天道)の下にあり,人間集団の一人である「己」は,仁(天道)の下で義(人道)に則して,己の分を活かすことが求められているのだと思います。

岡田武彦先生(1908年~2004年)は,西洋的制物論に対して東洋的崇物論を展開されました。万物が人間を含めて同根である以上は,人間が由無く他の生命を傷つけて制御したり従わせたりすることは,天理・崇物の道に反し,万物一体の仁に反する悪行なのです。

平成30年3月30日

塾長 倉田榮喜