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地球に生存する万物は,その命を次世代に繋ぐ為に智慧を絞って生き残りを図ります。

万物の中でも人類は,命を前世代から次世代に受け継がせるときにその命と共に,前世代が習得した生き残りの智慧と集団生活を円滑にするための倫理も次世代へと受け継がせるのです。

祖先が前世代までに修得し次世代に受け継がれる倫理を縦軸(伝統的倫理)とし,同世代の中での合意的倫理を横軸(時代的倫理)としたときに,伝統的倫理と時代的倫理との調和はどのようにはかればよいのかを考えてみたいと思います。

岡田武彦先生の語録「陽明学つれづれ草」には,「倫理には、縦のものと横のものがある。上下と左右がある。しかし、上下が基本で、それから左右が考えられるのが人情の自然である。しかるに、近年は逆になっている。現時の青少年の非行は、ここに原因することが多い。」とされます。

岡田先生の縦(上下)の倫理を伝統的倫理,横(左右)の倫理を時代的倫理と考えるとしたら,倫理の側面においては,伝統的倫理(縦軸)を主とし,時代的倫理(横軸)を従とすることが基本なのだと考えます。

では,政治的側面で伝統主義はどのように機能すべきなのか。

政治的決定を行うのは横の世代である現世代で,決定はその時代の民主的多数でなされますが,少なくとも決定に参加する個々人は,前世代から引き継いだ伝統の持つ重みを良く考えて,決定の意思表示を行なわなくてはならないと思っています。

平成30年7月11日

塾長 倉田榮喜