非は理に勝つ事能わず/理は法に勝つ事能わず/法は権に勝つ事能わず/権は天に勝つ事能わず,と二宮尊徳翁の一日一言(寺田一清編)にあります。天とは自然の摂理をさし,天道とは自然の摂理から導きだされる道理を言います。地球に存在する万物は自然の摂理下に在り,人類も例外なく自然の摂理の下で生存し,人は祖代々の命を受け継いで今を生きているのです。
自然の摂理は,万物が生成から消滅へと循環運行する時間軸と万物が調和して生存する空間軸を元理とし,天道はこの時空の元理から導かれる道理です。人も生から滅へと循環する時間軸の中で万物一体の一類として存在しますので,人が時空の元理から導かれる天道に添って生きる事は当然の事なのです。(岡田武彦先生が示される東洋的崇物論が西洋的制物論より天理・天道に適うと考える理由です。)
人道は,祖先への敬いと親に対する孝を根底に置いて,人類誕生から現在迄の経験則で得られた集団生活を円滑にする道理で(この道理は神道・儒教・仏教の訓えに示されます。),二度とない人生で命を賜り諸天諸仏に守られて生きている事に感謝し,他者の命を傷つけたり痛めたりすることなく,誠実に勤勉に自分の使命を務めて分度・推譲を実践できる人生の生き方のことです。この人道を人格として身につけられるように,皆さんは,万物一体の仁,勧善止悪の義,人との争いを避ける為の礼,そしてこれらの土台となる智勇を求め続ける鍛錬と修学が日課になるように努めて,皆さん其々に自己の使命を果たして欲しいと思います。
平成31年3月29日
塾長 倉田榮喜