皆さんの生命は,代々の祖父母から受け継がれている命です。皆さんが受け継いだ命は諸天万物に守られて今に存在しています。
能く其の根源を押し極めて見よ。
身体の根元は,父母の生育にあり。
父母の根元は,祖父母の丹誠にあり。
斯くの如く極る時は,天地の命令に帰す。
されば天地は大父母なり。故に元の父母と云えり。
と,「二宮尊徳一日一言」には書かれています。
親への孝養とは,単に自分を生んでくれた一人の親を大事にするだけでなく,
親への奉仕を通して,実は宇宙の根本生命に帰一することにほかならない。
これは藤樹先生のいわゆる「大孝」の説であり・・・
と,森信三先生は述べられます。
中江藤樹先生は,「孝は太虚を以て全体」とし「孝は宇宙生成の根本原理」とされますので,「大孝」とは大自然の根元生命へ帰命することになるのだと考えます。皆さんが祖先と親に対する報恩の誠を押し極めることは,大自然の根元の生命へ帰命することであり,その行動は自然の摂理に適うものになるのです。祖先や親に対する報恩の行動を極める事は,結局,自然の摂理の下で万物と共生して受け継いだ命を次世代に繋ぐ事なのです。
人間を万物の中心に位置付けて,生活の利便性を追求する為に,人が科学の力を以て自然を抑圧することではないことを,皆さんには明らめて欲しいと思っています。
和元年11月29日
塾長 倉田榮喜