動物である人は,自然の摂理に従って命を繋ぐ食料を得る手段として作物の種を播いて育て,生育に支障となる雑草は自然の摂理に抗して抜き取り,人の持つ欲をエネルギーとして少しでも多くの果実を収穫する為に作物の性質に誠実に向き合って小まめに勤勉に肥料を施し成長に必要な手入れをします。
二宮尊徳翁は,「人身あれば欲あるは即ち天理なり」と人の欲を認めたうえで,「人道は私欲を制する道」とされます。天理自然の道は万古に廃れませんが,人道は人間が生活をよくする為に長年の経験の中で作り上げたもので怠れば廃れてしまいますが,人間である為には,欲を制して社会の一員としての義務を果たすことが必要とされるのです。
皆さんが自分と家族を繁栄させこれを持続させる為には,人道を遵守し誠実に勤勉に家業に務め,分に応じた自分の使命を果たす為に命の時間を使うことが必要です。人は,自分の為であれば欲をエネルギーとして勤勉誠実に仕事に務める事で蓄財という果実を得ることが出来ますが,二宮翁は「奪うに益なく,譲るに益あり」を天理とされ,人間として他人のために尽くすという「義務の先行」が人道であり,自分の為に奪う事のみに努めるのは禽獣であって人道に反するとされています。人として誠実勤勉に自己の利を計り仕事に務める事は重要ですが,人間としての義務を利己よりも先行させる事が人道とされていますので,皆さんも,人道とは何か,利己と利他の後先ついて考えてみてください。
令和2年2月22日
塾長 倉田榮喜