動物である人は,本性として善性と悪性を持ち,時と場合によって悪性を発揮したり善性を発揮したりするのです。
人は「躾」が身になく「礼」を学ばず「志」も無かったら,本性である悪性のままに行動することを躊躇しませんが,一般的には善性と悪性の間を揺れ動きながら,人間として集団で生きる摩擦にも苦しみながら人生を死に向かって歩んでいるのです。
また,人間は,その歩みの中で他者の悪事に苦しむと同時に,自身が持つ悪性にも向き合いながら人生を生きているのです。
皆さんには人生の総決算である臨終時に悪事よりも善事が勝っていることを目指して欲しく,皆さんの人生の総決算における善事と悪事の±は子孫に引き継がれると覚悟して欲しいのです。
大分県の日田は,徳川体制時代において長崎に入った海外の文化や技能を江戸に伝えた要衝の天領地で,ここに咸宜園(ことごとく皆宜し)という有名な私塾がありました。
この咸宜園を主催した広瀬淡窓先生は,人生の生き方として日々の行いを「万善簿」として記録して積善に挑戦されました。
「広瀬淡窓と咸宜園」という本には,先生が「善」の白丸「○」とされたのは,「①財を捨てて人を利す~⑩生物を憐れむ」の10項目,「悪」として黒丸「●」とされたのは,「①過食~⑩卵を潰す」の10項目が紹介してあります。
皆さんも,人生の臨終においての決算は善事が悪事に勝るように,日々に積善に挑戦して欲しいと願っています。
平成29年11月30日
塾長 倉田榮喜