安岡正篤先生の照心語録では悪に対応する道として,①強い者に負ける(弱肉強食)②暴を持って暴に易える(復讐的態度)③汝の敵を愛せよ(宗教的態度)④聖者の宗教的心情を仮りて対面をつくる(偽善的態度)⑤悪を排しその悪から救おうとする(尚武)が挙げられ,⑤の尚武を実践的で真実の態度とされています。
しかし,尚武は簡単にできるものではなく,未だ尚武の態度がとれないときは,どのようにして悪に対応すればよいのか。
善は,集団の存続と発展に重要な価値であるのに対して,悪は,集団の存続と秩序を害するものとして位置づけられますので,集団の中で悪が善に勝つことを認めることは集団秩序の破壊につながり,結果として相互扶助と相関連帯の本質を失った集団は自然界で次第に淘汰されて生き残れなくなるのです。
故に,悪と向き合うときは善なる集団の一人であるとの自覚を持って,悪の態様を公開しその有様を白日にさらそうとする強い姿勢で向き合い,時に孤立無援の状況で逃げることも必要ですが,悪は放置しないとの決意と覚悟を持ち続けることが必要です。
「いじめ」も人の心を傷つける悪ですので,一人で我慢しないで他に相談することが対応の鉄則で,自分の世界に引き籠ることは悪の放置であり,相談を受けた他者も傍観者になってはならないのです。
山本周五郎先生に「百足違い」という物語があります。怒りの感情を抑制し時を待つことで不必要な悪との衝突は避けられますが,皆さんに目指して欲しいのは悪をも救う尚武の態度です。
平成29年12月25日
塾長 倉田榮喜