Archive: 2019.08

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堺屋太一氏(1935~2019)は,通産省官僚であった1975年に,「中東で戦争が起こり石油の輸出が制限されることで起こる経済システムの麻痺と社会の混乱」を「油断」として出版し,世にセンセーションを巻き起こしました。

エネルギーには,石油の他に石炭,天然ガス,水力,原子力,再エネ等がありますが,2015年時点で日本のエネルギー自給率は7.4%にすぎず世界34位のエネルギー貧国です。そして,中東に戦争が起こらなかったとしても,石油・石炭等のエネルギー資源が文明都市によって消費し尽されて地球に資源そのものが無くなり,世界の国々がエネルギー資源の輸出も輸入も出来なくなる時は遠い先のことではありません。

人類が火を使用するようになってから木を伐採して森林を破壊し,森林を破壊することで大地が砂漠化して食糧生産が出来なくなり,人々はその都度に水と食糧とエネルギーを求めて新天地を求めましたが,地球には新たな約束の地は存在せず他を侵略することも許されません。私達は,化石エネルギーや原子力発電に代わる自然エネルギー(地熱,風力,太陽光,水力,川や海の流力・バイオマス等)への代替と普及を急ぎ,自然エネルギーに応じた命の生存システムと生活文化を創らなくてはなりません。

日本は鎖国を原則とした江戸時代まで,エネルギーも食糧も自給自足する社会だったのですから,自然のリズムを根底においた自給自足の新たな循環型社会を創造することは,地球を捨てて宇宙へ侵略の旅に出るよりも現実性があると思っています。

令和元年8月30日 塾長 

倉田榮喜

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文明のソフト部分である思想・統治・経済・市場等の制度が整えられるなか,文明のハード部分を象徴する人工建造物の集積である都市は,経済至上主義を是とする統治制度の下で人と物を限りなく集めて資源を消費し,そのエネルギー消費は地球資源を枯渇させ,その排出は地球の温暖化と大気汚染等で自然環境を破壊しています。現在の文明を象徴する都市はこのまま存続できるのでしょうか。

問題の一つは,現在の都市は大地震等の自然災害で壊滅的な被害を受けるとされている事です。文明と科学の進展が地震の発生と災害を予防する事が出来たとしても,まずは,避難と生存に必要な安全な地域の整備を実施する事が先決です。そして,その際には被災した都市の復興は断念して,自然と共にあって命を繋ぐ事ができる新しい生存地域を創造したがよいと思うのです。

問題の二つは,日本は,エネルギーの9割と大部分の地下資源ばかりか食糧の6割(カロリーペース自給率37%),木材の8割,水産物の4割を輸入する海外依存の国家である事です。地球の資源が枯渇し,エネルギーや食糧が輸入できなくなったら都市は機能しません。この危機を避ける為には,エネルギーや必要な資源は国内の資源で代替できるようにする事,生存に必要な食糧と水は国として自給体制を構築する事が肝要なのですが,それが出来なければ,都市に住む人々は,水と米麦等の食糧は生存の効用においてダイヤモンドよりも必要な物である事を自覚して,食糧の供給が途絶えた場合にどのように対応するのか,国家に任せずに自分で出来る備えと覚悟が必要です。

令和元年8月9日

 塾長 倉田榮喜