講座Ⅵ 境遇と立志

1 境遇

皆さんが生れる境遇は様々で,世界的にみれば難民キャンプで誕生する人も大富豪の家に誕生する人もいます。貴方が誕生した境遇は貴方が選んだものではありませんが,祖父母代々の血脈を受け継いだ命に宿る業と共に生まれた境遇は受け入れるしかありません。しかし,その境遇にこそ貴方が為さなければならない役割と果たすべき使命があるのです。貴方は誕生した境遇で自分の使命を知覚して,其の使命を果たす為に命の時間を使って人生を生き抜くならば,祖父母代々の宿業と貴方の生まれた境遇を転換することが出来るのです。人は,天地自然の下で大地に支えられて血脈の業に挑戦しながら四苦八苦の人生を所願満足の臨終を目指して命の時間を使うのだと思いますが,貴方には,万物が止まる所を知るように,誕生した境遇を天命と覚悟して粘り強く二度とない人生を生き抜き必要があるのです。

天地自然の下で起こる大地震・台風・豪雨は,自然の摂理と天地間の調整に因って生じる自然現象で,人は自然を制圧することは出来ませんが,貴方の境遇は自身の自覚によって変えることが出来るのです。その為には,貴方は,自分が生まれた場所の地理を調べて地域と国土が持っている問題や生まれた境遇の家族と自分の課題に向き合って,自分の役割と自分の使命を果たす人生を生き抜いて欲しいと思います。富豪の家に生まれた人と逆境の中に生まれた人の臨終の有様は,その出自に因るのではなく其々の使命を果たす為に自身の命の時間を使ったかどうかに因るのだと思います。

現代の科学技術による日常的な利便性の向上は自然現象下での人の生存能力を減退させ,現文明下での物質的幸福を追求する風潮は人の精神を蝕んで人を差別化しています。貴方には,厳寒,酷熱の自然環境でも生き残れる心身を作り,人が動物的本能として持つ性欲と物欲を自制し,他者との比較と他者への羨望や嫉妬に自身の人生を狂わされることのないように貴方の人生を生き抜いて欲しいのです。

2 立志

立志とは,誰でも生れた場所とその境遇の中に人生で果たすべき使命が与えられていますので,貴方が其の使命を知覚して其の使命を果たす為に人生の行程表を作成することです。故に立志はまず使命を知覚することが必要となりますが,使命を知覚するためには貴方が生まれた場所の地理(地形・気象・風土)を明らかにしてその課題を把握すると共に,自身の個性を承知して人生を生きる覚悟が必要だと思います。

個性は,「個」と「性」からなり,「個」には世界に唯一つしかない特有の才能が秘められており,その才能は使命を果たす為に必要な力で天と祖父母から貴方に与えられた能力です。貴方は自身の個としての能力を見つけてその能力を使わなければなりませんが,貴方が自分の能力を見つけるためには,まずは,自分が好きな事,飽きることなく達成感を得られる事,自身の境遇でやらなければならない事等を弛むことなく実践していけば,その実践の過程で貴方が持っている能力が見つかります。「性」は,「性則理」とも言われますが,性には動物的本能と祖父母からの血脈に含まれる性分が秘められていますので,その性分が貴方の「個」を活かすように働くのか,貴方の「個」の妨げになるように働くのかは,貴方の命の時間の使い方如何なのです。

貴方の個性は,個と性が統一されることによってその才能が発揮されますが,個と性が分離してしまえば自身の心身的統一に欠けることになって欲望に振り回されることになってしまいます。自己中心主義(我執)は,個と性が分離して心身が動物的欲求に振り回されている状態ですので,自己中心主義の立志では使命を果たすことはできません。自己中心主義に捉われないようになる為には,自律的に心身的統一を体得する戒・定・慧を学ぶ工夫と心身の鍛錬を日々に積み重ね,時間の経過と共に人生の行程表をより具体的に時には修正して,貴方の役割と使命を果たせるように貴方の限りある命の時間を使って欲しいのです。

令和2年12月15日

塾長 倉田榮喜