講座Ⅷ 職業と奉仕

1 職業

職業は,社会において衣食住の物質やサービスを得る為に必要な収入を得る為の技能・知識・能力などを含めた多様な職務の業ですが,生活に必要な収入を得る為だけではなく,社会において個人の存在や居場所を知らしめるものであり,多様な職の業は社会に有用で社会機構と人々の生活を円滑にするものです。その根本は,人がこの世に生を受けて(賜命)果たすべき役割(分)を担う業(使命)であって,貴方が賜命の持つ役割を職業として務めることは人生を生き抜く力になります。

貴方の命は,祖父母から受け継いだ命であり,貴方の命の個性には与えられた使命を果たす能力が潜んでいるのですから,貴方は,できるだけ早く自分の個性と能力を磨きながら志に適い自分の役割を果たす為の職業を選択できるように努めることが重要です。そして,地球に生きている貴方が自分の個性に適う職業を選択しようとする際には,現在の地球の危機的状況と10年後の社会を考えて欲しいのです。貴方には,是非にかかわらず指摘される2030年問題(温暖化による環境危機,人口や砂漠化等による食糧危機等)を視野にいれて,地球の自然を破壊したり傷つけたりすることがない職業を選択して欲しいと思います。

貴方は,地球の自然の下で自分の志に適うと思われる職業を選択したらその目的と成果を明確にして,その職業に就いた後の5年後,10年後の姿を具体的に描ける程に想像してみてください。その為には選択しようとする職業の現実や問題の所在も検証してどのような力が必要かも知らなくてはなりません。簡単なことではありませんが,現実の社会への問題意識を持って職業を選択して欲しいし,地球環境の危機を救おうという意識を持って欲しいのです。

貴方が志に適う職業を選択したら,次にどうしたらその職業に就いて役割と目的を果たすことが出来るか,目的達成の為の行程表とそれを実行する一日一日の時間の使い方を律することが大切で,二度とない人生の有限の命の時間を大切に使って欲しいと思います。貴方は何をしたいのか,貴方は何になりたいのか,それを求めることが職業の選択にも通じますので,今後の社会の有様も考えて,①活思,②活書,➂活言,➃活行,⑤活感の「五活」を常に心掛けて,二度とない人生で貴方の役割を果たせるように有限の命を積極的に使って生き抜いて欲しいと思いますし,そして, 貴方が選択した職業が10年後,20年後の地球に希望を灯すものであることを願っています。

2 職業と奉仕

職業は,社会に有用で貴方の生活の基盤となるもので有償であることが原則ですから技能と労力に応じた対価を得る必要がありますが,職業自体が社会から求められる有用な業務ですから,職業の技を磨いてその能力を高めることはより多く社会に貢献することになります。故に,貴方が自分の技能や労力の対価以上に社会に貢献できるようになれば,対価以上の分は社会への奉仕になるのです。奉仕は,労力,時間,業務で磨いた技能を必要とされる場所や求める人々に無償で提供することですから対価を得ることは出来ませんが,無償の奉仕が多ければ多いほどその奉仕は貴方の積善となって,その余禄は子孫に及びますが,仮にそれを信じることが出来なくても,奉仕は多くの人生の仲間を持つことに繋がるのです。

貴方は,志に応じた職業の技能を高めることで生活に必要な財を得ることが出来るようになりますが,重要なことは職業を蓄財の手段とするのではなく,社会への貢献度を高めより多くの奉仕の機会にすることです。貴方が富を手に入れる手段として職業を位置付けると,ともすれば利益の追求が第一となり,やがてはその利益の為に貴方を破滅させることが多いのです。職業から得られる利益は,社会貢献に適う「利」でなければなりませんし,貴方が経営者になれば会社や家業が子々孫々まで永続していく為には,「自利」よりも「他利」を優先し,「利」よりも「義」を先に置くべきであることが先人の教訓です。そして,義の大前提としては自然を破壊することなく環境保全に資する仕事であることが必要ですし,地球環境の現況に危機感を持って欲しいと思います。そのうえでのことですが,職業における義は,①仕事に嘘がない事(真)②仕事が社会の役に立つ事(善)➂仕事は調和がとれて美しいこと(美),という真・善・美の価値を満たすものであると考えるところですが,そうである為には仕事の現況が義に適っているかどうかを定期的に検証し,社会の進展に適応した仕事を実現していくことが重要になります。これらを怠ることが破滅を招くことになるのは先人の経験からも学べますが,日々の油断や怠慢にも注意して自分自身を戒める必要があります。

貴方には,目指す職業や奉仕について,自分で納得できるまで思考と実践を積み重ね自身の志に適う職業を自分の使命として,貴方の賜命に与えられている役割(分)を果たして欲しと思いますし,貴方の使命が地球の未来を拓くものであることを期待します。

令和3年2月15日

塾長 倉田榮喜