最終更新:

文明を象徴する現在の都市は,太陽の光が届かない夜でも人工の光で煌々と照らし出されています。

統治制度等のシステムと科学技術の発達で効率性と利便性を追求して造られた人工建造物の集積である文明都市は,西洋的制物論と経済至上主義の下で地球の資源を限りなく消費し続け,万物の中に人間を中心とする思想は,自然だけではなく命さえも制圧(遺伝子操作・クローン技術)しようとしています。

果して文明は,自然を制圧して地震や台風等の自然災害の発生を防止することが出来るのか,命の存続に必要な太陽に代わる光と十分な水を人工的に造り出すことも出来るのか。仮にこれらが出来たとしても,自然のリズムに反し人間中心主義の欲望と驕りで造られた都市が今後も存続出来るとは思えません。

これからは,自然を制圧する西洋的制物論ではなく,岡田武彦先生の東洋的崇物論で,原始古代から万物の生死が繰り返される自然循環のリズムと万物の調和を根本とすべきで,科学技術等の進化を手段として自然や命を制圧の対象とすべきではないのです。

地球物理学者の寺田虎彦(1878~1935)は「天災と国防」という随想に「文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向がある」と書いていますが,文明都市の人工建造機能物が増大すればするほど,自然のリズムで発生する地震・台風・豪雨等による都市被害は累積的に大きくなるのが現実です。

私達は,自然に抗する都市型人工物質文明に代えて,自然と共にある地域型生存文明と生活文化を創造しなくてはなりません。

 令和元年7月31日 

塾長 倉田榮喜