Category: コラム

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H29.12.25

安岡正篤先生の照心語録では悪に対応する道として,①強い者に負ける(弱肉強食)②暴を持って暴に易える(復讐的態度)③汝の敵を愛せよ(宗教的態度)④聖者の宗教的心情を仮りて対面をつくる(偽善的態度)⑤悪を排しその悪から救おうとする(尚武)が挙げられ,⑤の尚武を実践的で真実の態度とされています。

しかし,尚武は簡単にできるものではなく,未だ尚武の態度がとれないときは,どのようにして悪に対応すればよいのか。

善は,集団の存続と発展に重要な価値であるのに対して,悪は,集団の存続と秩序を害するものとして位置づけられますので,集団の中で悪が善に勝つことを認めることは集団秩序の破壊につながり,結果として相互扶助と相関連帯の本質を失った集団は自然界で次第に淘汰されて生き残れなくなるのです。

故に,悪と向き合うときは善なる集団の一人であるとの自覚を持って,悪の態様を公開しその有様を白日にさらそうとする強い姿勢で向き合い,時に孤立無援の状況で逃げることも必要ですが,悪は放置しないとの決意と覚悟を持ち続けることが必要です。

「いじめ」も人の心を傷つける悪ですので,一人で我慢しないで他に相談することが対応の鉄則で,自分の世界に引き籠ることは悪の放置であり,相談を受けた他者も傍観者になってはならないのです。

山本周五郎先生に「百足違い」という物語があります。怒りの感情を抑制し時を待つことで不必要な悪との衝突は避けられますが,皆さんに目指して欲しいのは悪をも救う尚武の態度です。

平成29年12月25日

   塾長 倉田榮喜

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H30.1.11(

森信三先生の一日一語一月九日の頁に,頼山陽の「十有三春秋/逝者己如水/天地無始終/人生有生死/安得類古人/列千載青史」という立志之詩が紹介されており,「天地始終なく人生生死あり」の一句を,いかに実感をもってわが身に刻み込むかが問題であるとされます。

皆さんは,二度とない本年の年頭において,どのような立志を掲げ,どのような決意を其の身に刻み込まれたでしょうか。

安岡正篤先生の照心語録には「立志」とは,「現実に対する虚無の中から真実を打ち出そうとする、これを立志という。これが真の意味での理想を持つということだ。」とあります。

真実を打ち出そうとする理想は常に欠くべからざるものですが,皆さんは,まずは必死に頑張れば達成できる直近の目標を実現することを其の身に刻み込むことが大切な時期です。

森信三先生の「真理は現実のただなかにあり」の「志を立てて生きる」というお話のなかで,「立志とは、ほかの言葉でわかりやすくいえば、甘え心を切り捨てること」と言われ,「諸君!例外をつくっただめですぞ。今日は疲れているからとか、夕べはどうも睡眠不足だったからと考えたら、・・・例外をつくったらもうやれん。決然と立ち上がるんです。」と甘え心を切り捨てることを立志とされて,その後に人生の種まきの話をされています。

皆さんの刻苦勉励は,人生を幸せにするための種まきであり,人生において自分の自を発揮しその分を果たすためです。故に,「決然として甘えを排し勉強すること」が立志の出発点となるのです。

平成30年1月11日

塾長 倉田榮喜

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H30.1.31

人は,指針となり生き方を照らす一燈を掲げる必要があります。

「一燈照隅・万燈照国」は伝教大師(最澄)が言った言葉とされ,安岡正篤先生は「一燈照隅・萬燈遍照」と説かれました。

皆さんは,自分の人生で何を成したいのか,人生をどのように生きるのか,その掲げる一燈を立志といってもよいのです。

皆さんには,掲げる一燈ができるだけ遍く照らす一燈であることを目指して欲しいと思いますが,まずは,自分の脚下と家族を照らす一燈として光って欲しいのです。

皆さんの一燈がどのような光を発するかは刻苦勉励を続けるなかで次第に形作られていくのですが,その一燈は自分の才能(自)と役割(分)に応じたものになるべきです。

そして今は,自分の「自」と「分」に応じた一燈の光射程を求めながら,時々に達すべき目標点と実現すべき目的を心に念じて刻苦勉励を続けることが,何より肝要と覚悟して欲しいのです。

皆さんの立志の一燈が夫々の才能と役割に応じて,まず自分の人生の進路と生き方を照らす一燈として光り,そして家族を幸せに照らす一燈として輝き,次第に他者と集団をも幸せにする一燈と成って遍く光り輝くことを,目指して欲しいと思います。

その立志の一燈を光り輝くものにする為には,人生の大敵である甘えを排した刻苦勉励と,年齢に応じて達すべき目標点と実現すべき目的を日々に心に刻み込む自律の強い意思が必要です。

貴方が立志の一燈を掲げて光り輝き,その目標と目的が一つまた一つと実現していくことを心から期待しています。

平成30年1月31日

塾長 倉田榮喜

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H30.2.9

一燈を掲げて志を実現するには,努力を継続する自律意思と目標と目的を心に念じその実現を決定する覚悟が必要です。

立志の目標と目的が日々に念じる心願となれば,目標達成と目的実現に不可欠な事と不必要な事とは自然と選択できるのです。

貴方は,二度とない人生に何を求めるのか,何を実現したいのか,との問いを心に反芻してその答えを追い求めながら,立志の覚悟をゆるぎないものにして実現の努力を継続することが肝心です。

生まれ育った環境や備わった能力は夫々に異なりますので,貴方は好きな事や得意な事を学ぶことから始めればよく,他者の環境や才能を妬んでも,良いことは皆無で積善の道にも反します。

貴方が,自分に秘められた才能を信じ稚心や甘え心を排して,自分が存在する環境や状況をよく見詰めて覚悟するならば,貴方が人生で果たすべき使命は必ず見つかるのです。

照国の一燈たらんとの覚悟を決めて,その実現に向かって努力を続ければ貴方の使命は次第に明らかになり,その使命のステージは一段また一段と高くなって行くのです。

当初の志が貴方の最終的な使命であるかどうかに関わらず,志に向かって努力を続けることは何の無駄にもなりません。

そして,貴方が立志の一燈を掲げてその使命を人生で実現するためには,自身の日々の行動を律する規律は必要不可欠です。

貴方は,起床・挨拶・食事・勉学・鍛錬・仕事・読書・娯楽(ゲーム等の制限)・就寝等に自身の規律を創り,甘えと例外を排して規律を守り,勉学と鍛錬を継続する努力と覚悟が必要です。

                   平成30年2月9日

                     塾長 倉田榮喜

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H30.2.28

橋本左内(1834~1859年)は,徳川幕藩体制下の思想家ですが,吉田松陰と同じく安政の大獄で命を落としました。

橋本左内は,15歳の時,①去稚心,②振気,③立志,④勉学,⑤択交友という5か条の生き方の指針を創ったとされます。

この指針は今なら中学3年生頃に創られたのですから,皆さんも,自分の生き方の指針を早く創って欲しいと思うのです。

生き方の指針は,最初から完全なものではなくても成長に応じて改めれば良いのですから,大切な事はともかく出来るだけ早く創って,自分の行動を日々に律して勉学と鍛錬に励むことです。

稚心とは子供じみた心を指しますが,いつまでも親に甘えて,結果にも責任を取らず自由気儘な心のことです。

皆さんが何歳になっても稚心を去れないでいると,その甘え心は嫉妬と一緒になって,人生そのものを狂わせます。

立志を掲げる以上はできるだけ早く稚心を去って,自分に徹し自分の環境を受け入れる「唯我他尊」「自律他尊」の人になっていただきたいと思うのです。

唯我他尊の生き方とは,自分に起こる事象は幸不幸の全てを受け止めて,他に転嫁せずに天から自分に与えられた宿題として,どんな不幸にも負けることなく人生を生き抜く生き方のことです。

水銀中毒被害の遺族の方が「毒を飲まされたのではなく,毒を引き受けたのだ,と思うようになった」とお話されたそうです。

全ての事象を自分の宿題として引き受けることは大難事ですが,立志学舎で与に学びながら与に目指したいと願っています。

平成30年2月28日

塾長 倉田榮喜