Category: コラム

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堺屋太一氏(1935~2019)は,通産省官僚であった1975年に,「中東で戦争が起こり石油の輸出が制限されることで起こる経済システムの麻痺と社会の混乱」を「油断」として出版し,世にセンセーションを巻き起こしました。

エネルギーには,石油の他に石炭,天然ガス,水力,原子力,再エネ等がありますが,2015年時点で日本のエネルギー自給率は7.4%にすぎず世界34位のエネルギー貧国です。そして,中東に戦争が起こらなかったとしても,石油・石炭等のエネルギー資源が文明都市によって消費し尽されて地球に資源そのものが無くなり,世界の国々がエネルギー資源の輸出も輸入も出来なくなる時は遠い先のことではありません。

人類が火を使用するようになってから木を伐採して森林を破壊し,森林を破壊することで大地が砂漠化して食糧生産が出来なくなり,人々はその都度に水と食糧とエネルギーを求めて新天地を求めましたが,地球には新たな約束の地は存在せず他を侵略することも許されません。私達は,化石エネルギーや原子力発電に代わる自然エネルギー(地熱,風力,太陽光,水力,川や海の流力・バイオマス等)への代替と普及を急ぎ,自然エネルギーに応じた命の生存システムと生活文化を創らなくてはなりません。

日本は鎖国を原則とした江戸時代まで,エネルギーも食糧も自給自足する社会だったのですから,自然のリズムを根底においた自給自足の新たな循環型社会を創造することは,地球を捨てて宇宙へ侵略の旅に出るよりも現実性があると思っています。

令和元年8月30日 塾長 

倉田榮喜

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エネルギーが継続的に供給されてこそ都市は機能しますが,2017年時点で地球のエネルギー資源埋蔵量を年間生産量で割ると,石油は50年,天然ガスは53年,石炭は134年で尽き,50年後にエネルギーが都市に供給される見込は少ないのです。原子力発電は,使用済み核燃料棒の処分方法がなく,大事故の際には放射性物質や放射線の拡散を抑制出来ない状況にあります。原子力発電の使用済み核燃料棒の処分方法が見つかり放射線が生命と環境に対して無害になる対策が発見されるまで,原子力発電は未完の文明装置「死滅への文明装置」(脱原発・再生文化論)であることを覚悟しなければなりません。

現在の文明都市は,エネルギーや食糧が供給されなくなると機能不全となり,さらには想定外の大地震が起こると経済効率優先で造られた文明施設自体が簡単に死の装置に転じてしまいます。都市に住む人々は,今後に起こる大事に備えて逃げる方法と避難先を準備しておかなければならないのですが,出来るだけ早く都市生活に見切りをつけて,食糧もエネルギーも自給自足できる場所を探しておくべき時が目前に来ていると思います。

未来を担う皆さんには,経済至上主義で造られた都市生活で,命の時間と共に体や頭を資本に酷使されるのではなく,自分の命の時間と身体は祖父母の故郷で,自然と共に生きることが出来る生活空間と生活文化を創造することに使って頂きたいと思います。皆さんの意思と力が結集して,自給自足の地域共生型集落が再生創造されてこそ,未来に命を繋ぐことが出来ると思うからです。

令和元年9月11日

 塾長 倉田榮喜

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日本人の平均寿命は,文明の利便性と医学の進歩で明治初期の頃と比べると大幅に延び高齢化が進む一方で,一人一人の生命力や生存能力は大気汚染等の環境汚染や有害物質の影響もあってか弱くなり続けています。日本の人口は2015年時点で1億2700万人と数えられていましたが,100年も経たないうちに5000万人程度に減少すると予測されるのです。

この人口減少に対して,利益を最優先する資本主義は,都市機能の維持と労働人口や消費者人口を確保する為に,地方の過疎地を切り棄て都市に人口を集中させようとするのだと思いますが,大量の消費を必要とする現在の都市と資本主義に未来があるとは思えません。

日本の産業別就業者数は2018年時で6664万とされ,そのうち第一次産業の従事者は231万人で全体の3.5%(独立行政法人労働政策研究・研修機構),そのうちの農林業の就労者は204万人に過ぎません。他方で世界の人口は90億人を超えようとし,生産環境の悪化で人口増加に見合う食糧生産が出来ず食糧の輸入も途絶えてお金で食べ物を買えなくなった場合に,暴力で食糧を簒奪しても一時的にすぎず,結局,日本の食糧自給率が40%未満では多くの日本人は餓死の危機に直面するのです。

この危機を生き残る為には食料は自分で確保するしかなく,危機を覚知する人は,田畑が残る地方に移住して半農・半職の生活方式に転換するか,国の政策として第一次産業の就労者数を自給自足が可能な程に増大させて,利益優先の資本主義から農を本にする国に変えるしかないと思いますが,どう実現していくかが問題です。

令和元年9月30日

塾長 倉田榮喜

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日本の人口は減少を続ける見込みですが,世界の人口は西暦2000年時は約61億人で食糧需要は約45憶トンでしたが,同2050年時には約96億人に達し食糧需要は約69憶トンまで増加するとされています(平成27年10月農林水産省)。

日本は,9割以上のエネルギーを海外に依存するエネルギー貧国ですが,食糧自給率もカロリーベースで計算しても4割に満たず,その生産率は,米は100%ですが,小麦は13%,大豆は7%,肉類は9%しかありません(農林水産省平成26年概算値)。

人口が増えても食糧生産量が需要を上回っている限り食糧不足は起こりませんが,問題は人口の増加に見合うだけの食糧生産を今後も続けることが可能かということです。

大地は豊穣で十分な食料生産力があるとの見方もあると思いますが,世界の文明都市が現在の水準でエネルギーを消費して大気を汚染し温暖化が進めば,地球の食糧生産力は減少して需要が供給を上回り,日本は食糧の輸入が出来なくなる事態が現実化するのも遠い先の話ではないと思えるのです。

世界で食糧が不足した場合にお金で買い漁る事は許されず,米麦大豆等の生存に必要な穀類は輸入に依存するのではなく,国内での自給体制を確立する事は急務なのです。

人が生存して明日への命を繋ぐ為には,食糧はダイヤモンドよりも重要で車よりも必要であることを覚知し,国内の食糧自給体制を急ぎ,農業を本とする自然と共にある国に変わることが必要なのです。

令和元年10月10日

塾長 倉田榮喜

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万物を一体とする自然環境の下で,人が次世代に命を繋ぐのであれば,「種の尊厳」は価値の根本であり命の源です。

山形大学は,「およそ45億歳の地球は約6500万年前の恐竜絶滅や巨大隕石の衝突によって地球上の生物の約75%の絶滅を経験したと云われているが,現在の絶滅のスピードはこの大絶滅のスピードをはるかに上回り,100年前は1年間に1種の割合だったものが現在では1日に約100種の割合,1年間に4万種の生物が姿を消し,このままでは25年~30年後には地球上の全生物の4分の1が失われてしまう計算になる。」(概要)と発表しています。

地球に多種多様な種の生命体が存在し,これらの相互依存関係によっての自然環境があり,人は,空気や水を含めてこれらの自然からの贈物によって生きているのですから,地球に存在する種の絶滅の進行は命の生存環境を悪化させ,今後もさらに種の絶滅が進めば,人も生き残れない環境になると考えられます。

現在の種の絶滅の原因は,森林の破壊,オゾン層の破壊,地球の温暖化,人が造り出した農薬等有害物質の拡散等ですが,この原因を作り出しているのは欲望を本質とする利益至上の資本主義経済システムに他ならないと思うのです。

資本主義が継続的な成長と短期利益の確保を目的としている以上は,種の絶滅と生存環境の悪化が今後も限りなく進行して,そして終局にあるは人類の滅亡ではないかと思うのです。

令和元年10月31日

塾長 倉田榮喜