Category: コラム

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非は理に勝つ事能わず/理は法に勝つ事能わず/法は権に勝つ事能わず/権は天に勝つ事能わずと二宮尊徳翁の一日一言(寺田一清編)にあります。天とは自然の摂理をさし,天道とは自然の摂理から導きだされる道理を言います。地球に存在する万物は自然の摂理下に在り,人類も例外なく自然の摂理の下で生存し,人は祖代々の命を受け継いで今を生きているのです。

自然の摂理は,万物が生成から消滅へと循環運行する時間軸と万物が調和して生存する空間軸を元理とし,天道はこの時空の元理から導かれる道理です。人も生から滅へと循環する時間軸の中で万物一体の一類として存在しますので,人が時空の元理から導かれる天道に添って生きる事は当然の事なのです。(岡田武彦先生が示される東洋的崇物論が西洋的制物論より天理・天道に適うと考える理由です。)

人道は,祖先への敬いと親に対する孝を根底に置いて,人類誕生から現在迄の経験則で得られた集団生活を円滑にする道理で(この道理は神道・儒教・仏教の訓えに示されます。),二度とない人生で命を賜り諸天諸仏に守られて生きている事に感謝し,他者の命を傷つけたり痛めたりすることなく,誠実に勤勉に自分の使命を務めて分度・推譲を実践できる人生の生き方のことです。この人道を人格として身につけられるように,皆さんは,万物一体の仁,勧善止悪の義,人との争いを避ける為の礼,そしてこれらの土台となる智勇を求め続ける鍛錬と修学が日課になるように努めて,皆さん其々に自己の使命を果たして欲しいと思います。

平成31年3月29日

塾長 倉田榮喜

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孫氏軍争篇第七に「故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、難知如陰、不動如山、動如雷霆」(故に其の疾きこと風の如く、其の徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、知りがたきこと陰の如く、動かざること山の如く、動くこと雷霆のごとし)とあり,風林火山の旗印はこの孫氏を部分的に引用したとされます。孫氏にあるとおり,戦いにおける動が勝利に結びつくためには動の前の静が肝心であり,静こそが動の根源エネルギーと言ってよいのです。勝利には静時におけるエネギルーの蓄積が不可欠です。

静には,体の静(体を動かす前の構えの静),技の静(自身が持つ技能の力),心の静(何事にも動じない心)があります。体の構えが整わずして勝利はなく,自身に技の力なくして勝利はならず,物事に惑わされない不動の心がないと宿業や世間での労苦困難に耐え切れずに人生の荒波に飲みこまれてしまいます。体の静(構えの静)を身につける為には常の立腰が重要であり,技能の力を身につける為には早い時期からの修練が必要です。そして,不動の心を自分のものにする為には兀座による内省と揺るぎない指針や判断基準を持つ事が肝心であり,この為には師を求め先達や古書からも学ぶことが重要になります。

二宮尊徳翁は成田山に参籠して,不動尊の背中の火焔・片方の剣・片方の縄から不動心を得て苦境を乗り切ったとされます。皆さんも,血脈の宿業(背中の火焔)に耐え世間の非難・風評(身体を縛る縄)に捉われない心の剣を持って(弱い心を断ち切る剣),宿業や人生の荒波に負けず自分が立てる志を実現してください。

平成31年4月11日

塾長 倉田榮喜

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新元号令和の時代が5月1日から始まりました。平成の時代を無事に過ごせた事に感謝し,新元号令和の時代が穏やかで共生の時代へと進み,人類が直面している課題が解決される時代となるように努めたいと思います。

人類が直面している課題の一つは資本主義の歪みです。少数の資本家が価値の余剰を寡占する限り貧富の差は極大化し,この歪みを正すためには,資本主義者がその余剰を大多数に還元するシステムを作るか,大多数が数の力で寡占のシステムを打ち壊してしまうか又は多数の労働者が価値の余剰を資本家に提供することを拒否するかの方法を考えることができます。

地球環境の破壊や食糧不足も人類が直面している課題です。日本の食糧供給率は,カロリーベース38パーセント前後,穀物ベース28%前後で日本人は輸入が止まったら餓死するのです。資本主義による富の寡占と環境破壊や食糧危機を解決する方法として,安藤昌益先生が唱えられた「自(ひと)り然る(す)」・「直(みずか)ら耕す(たがやす)」・「互性」という考え方を再評価して,自然の摂理の下での「直耕と共生」という人間古来の生き方を確認したいと思うのです。

白川静先生の字通では,「令」は「礼冠をつけて神意を聞く人の形」とされており,「おつげ・みことのり・いましめ・おしえ・よい・ただしい」等の意味が載せられています。

令和の新時代が,「自然の摂理の下での共生」の時代へと進み,「打ち壊し」という争乱の時代には決してならないように,令和の時代を担う皆さんと共にその解を考えたいと思うのです。

令和元年5月7日

塾長 倉田榮喜

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戦争は,残酷悲惨で万物の生命を故なく奪ってしまう事は明らかなのに,戦争が絶えないのは何故でしょうか。権力の行使に酔う指導者のせいでしょうか。あるいは,戦争も自然の摂理に組み込まれた万物調和の調整システムの一つなのでしょうか。

人が生きる為に必要な食糧が不足したり生存の基盤となる土地が奪われたり環境の破壊で消滅したりした場合に,その危機を克服する手段として,他国を侵略して食糧と土地を確保した指導者は英雄となるのでしょうか。

令和の新時代で戦争や紛争を解決し,地球環境の破壊も防止できる指導者が現れることを期待するばかりです。

貧富の差の拡大や環境破壊と食糧不足という深刻な危機を前にして,令和の時代を担う皆さんに期待しお願いしたいのは,資本主義の歪みを解決しお金で支配されることのない仕組,金が金を産む利息は生存と生活に必要な範囲でしか認めない仕組,現在も続く環境破壊を防止する仕組,食糧不足の危機を解決する自給的直耕制度の仕組等を作り上げて頂きたい。日本も輸入も止まり食糧が不足したら国土を直耕して自給自足するしかないのです。

令和の時代に皆さんが持っている命の時間を,貧富の差が拡大する事や自然環境を破壊する事には使わない事を決意して,自分や家族が抱えている課題や住んでいる地域や国が直面している危機を鏡のように歪みなく照らし出して,どうしたらこれらを解決できるか,自分の問題として考えに考え抜いて,生き残る為の解決策を実践して頂きたいのです。

令和元年5月10日

塾長 倉田榮喜

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皆さんは,二度とない人生をこれから自分で作り上げていくのですが,生きる為の衣・食・住は自分の技と力で得るのが原則です。衣食住を自分の技と力で得る為には,自分が持つ仕事(職)のプロになる事が肝要で,自分の仕事について第一級のプロになるとの高い目標と,その目標を必ず達成する強い思いと具体的行程表を作成して,これを日々に実践することが必要となります。

仕事の対価として報酬を得ている人は,本来は全員がプロでなければならず,プロと評価される為には仕事の価値と報酬を比較して「報酬≦仕事の価値」でなくてはなりませんし,報酬と仕事の価値の対比に置いて,仕事の価値が他者に抜きん出るようになってはじめて本物のプロフェッショナルといえるのです。

「プロの条件」(藤尾秀昭文武田早雲書)という本には,プロとしての人間力を高める5つの秘伝として,「➀自分で高い目標を立てる②約束を守る➂準備をする④進んで代償を支払う(自己投資)⑤神は努力する者に必ず報いると心から信じている」との5つが示されています。志を立てて高い目標を持ち,仕事(職)のプロになる為の具体的行程表を実践する修学と鍛錬を積み重ねるという日々の小事の中に,皆さんの将来における大事達成の秘訣があるのです。

さらに,皆さんの将来には必ず起こる大災害と食糧不足の危機時に,皆さんと家族が生き残る準備として,大地を直耕して食糧を得ることが出来る農の力と必要な道具を作ることが出来る技の力を持った人になることにも意識して努めて欲しいと願っています。

令和元年5月30日

塾長 倉田榮喜