Category: コラム

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二度とない人生は,皆さんが祖父母の命を受け継いで此の世に生を受けた時に始まり,皆さんの命の時間が無くなる臨終の時に終ります。其の臨終の時に自分は幸福であったと思える為には少なくとも自分の分は務めたという満足感を持って臨終を迎えることが必要だと考えますが,幸福は為すべきことをした人に対し天が与えるものだとも言われます(森信三一日一語)。

人生で自分の臨終時に満足感を持てることは,自身の命の使い方を誇れることだと思いますが,その為にはまず自身の命の時間を使うべき使命を見つけることが大切になります。自分の使命を見つける為には,使命を求め続ける自己規律と修学と鍛錬を継続する事が必要ですが,貴方が何の為にこの世に生を受けて何の為に生かされているのかを自問しながら日々の修学と鍛錬を継続するならば,年齢と環境に応じた自分の使命を感得することは決して難しいことではありません。

人生における原点とは,修行と鍛錬の中で自分の使命を感得しえた時と場所を示しますが,その原点は夫々の人間的な成長に伴ってより高くより強固に止揚されていき,貴方が自分の原点を持つことが出来れば,人生で行き詰っても道に迷うことがあっても,自分の原点に立ち帰って再び出発することが出来るのです。

貴方が自身の使命を明確にして原点を持つことは,進むべき人生の選択の指針を持つ事でもあります。二度とない人生で皆さんに自分の原点を持って欲しいと思う所以です。

平成31年1月11日

塾長 倉田榮喜

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人生には限度があり,生きる苦難も無限に続く事はありません。人生に如何なる苦難があっても生き抜く事こそ第一と決めて,自裁はしないで欲しい,此の世に二つとない大切な命です。人生でどのような苦難があろうとも命を放棄せず,苦難の正体を明らかにして対処の智慧を絞りぬき難時を乗り越えてください。

人生に限度があるように地球の空気も水も無限にはなく,限度なき成長や繁栄は紙上だけのもので,人類が限度なき成長を目指して負担を次世代に先送りする事は崩壊の道標にほかならず,何事も限度を知り分度を極める事が生き方の基本だと思います。

人の動物的欲望に限界がないのは問題ですが,資源が無限であることを前提にする資本主義も,限りなき欲望を基本とする生き方も,限度という真理の前に崩壊せざるを得ないと思うのです。地球の資源は有限であり全ての物事には限度があることを前提として,皆さんは,限度を知り自分の分を見極めてその分度を明らかにしながら人生の苦難を乗り越える智勇を持ってください。

二宮尊徳先生は,人生の生き方として「分を定めて度を立てる」ことを基本とされました。「分を定める」とは,社会の中で果たすべき自分の分を見極める事で,「度を立てる」とは,自分が持つ其の分を極めて経済的収支の割合も明確にして人生を生き抜いて行く事だと思います。

二度とない人生において,自分の其の分を極めて其の度を立てる為には社会で果たすべき自分の使命を覚知する事が必要で,使命を覚知する事は分を極めて度を明確にする第一歩なのです。

平成31年1月31日

塾長 倉田榮喜

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使命を知る事が「分を定めて度を立てる」第一歩であるならば,其の使命はどうしたら知ることができるのか。日々の修学と鍛錬は使命の知覚に通じますが,まずは,現在の環境と境遇を直視して,今の境遇で自分が出来る役割を見つけてこれを実行する事が使命を知る始まりです。家の整理や掃除等家族の手助けになる事,学校で皆の役にたつ事など自覚と意思さえ持てば出来る事が貴方の最初の役割です。

士農工商等の身分制度があった時代には「町人のくせに,家臣の分際で」と叱責され,現在も「分を知れ」という言葉に不相応な事はするなとの意が込められることもありますが,境遇は貴方が持つ才能の活用と意志によって変える事が出来ます。次の境遇での役割を次第に大きくし新ステージで果たす役割を極めていくなかで,自分が好きな事,行いたい事,果たすべき事を発見する事が出来るのです。その発見が貴方の使命を知覚する事に結ばれて知覚した使命と志が一致したら,次にはどうしたらその志を実現出来るかを具体的に計画する事が必要です。

使命を知覚し志を立てどうしたらその使命を達成することが出来るのか,目的達成迄の行程を逆算的にスケジュール化する事が必要であって,立志を具体化する事は目的達成に不可欠です。貴方が持っている命の時間には限度があり,使命を知覚し志を立てこれを実現する為には,貴方の命の時間が自分の意思ではなく他者の思惑で使われる事がないように自覚自制し,貴方の目的を実現出来るように命の時間を使って欲しいと願っています。

平成31年2月12日

塾長 倉田榮喜

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貴方が使命を知覚して志を立てる為には,貴方が直面している問題を直視して乗り越えるべき課題を見つけることが必要です。

二度とない人生で,限りある命の時間を活用する為には惰性で漫然と一日を過ごす事は実にもったいない事です。貴方が自分の課題を見つける為には,①自身の問題点,②家族の問題点,③地域と国の問題点,を自分で書き出してどうしたらその問題を解決できるかを貴方の課題にするのです。

人には夫々に能力と適正があり体格や持っている力も違いますので,自身の分限(適性と限度)を知り(知足),自身の適性に合いやれば出来る事を探し出し頑張ればもっと出来るようになるには次は何をやれば良いのを具体的にして,その課題を解決する為の学と行を日課にする事です。

次に家族の問題です。貴方の家族が経済的問題もなく愛情に満たされた家族だと問題を発見する事は大変で,覚悟して自身の課題や地域や国の問題点に取り組まないと貴方の成長は困難です。一方で,家族に問題が沢山ある人は課題の発見は容易です。経済的問題や家族間の問題をどうしたら解決できるか,非裁・非責・宥恕・連帯の精神で問題の解決に取り組む事は,貴方の成長と使命の知覚に結びつきます。貴方が不遇の環境にあっても,その境遇を受け入れて立ち向かう覚悟を持ち,自分の境遇も悪くはないと明らめて前に進む方が境遇を嘆くよりはよいのです。

其の自身の課題を乗り越える日々の学と行の実践には,五省(至誠・言行・気力・努力・不精)を活用して欲しいと思います。

平成31年2月28日

塾長 倉田榮喜

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二度とない人生を生きている生は,自然の摂理下で賜った生であり,その生は祖代々の血を連綿として受け継いでいる命です。自然の摂理下で賜った生(賜生)ですから自然の摂理に添って生きる事は必然であり,祖代々の命を受け継いでいるのですから命に宿る宿業と共に生きる事を覚悟しなくてはなりません。宿業とは,自身が持っている命の傾向性と祖代々の血脈に含まれた宿命の事だと考えますが,人は誰であれ宿業を背負って二度とない人生を生きています。

貴方が宿業故に暗闇の不遇に遭っても,自分の生が賜った生であると悟り,二度とない人生を生き抜く覚悟を持って状況を見据えれば,進むべき先を照らす光が必ず見つかるのですから,宿業を人生を生き抜く支障ではなく生きる力とした方が良いのです。暗闇の彼方に見える光が他力の灯でも,暗闇を抜け出るまでに歩く力は自力と家族力であり,その自力は貴方の命に元々から備えられているからこそ賜生なのです。

貴方の二度とない人生の賜生において,自らの使命を果たすには,まず賜生であることを悟り,次に自分の使命を知覚する為の課題を乗り越える学と行との錬磨を怠らず,志を立てて目指すべき目的に向かって,一歩また一歩と辛いときも苦しい時も弛まなく歩み続けるならば,どんな暗闇であろうとも必ず抜け出る事が出来ることを確信して欲しいのです。

窮してくるしまず・憂えて意衰えず・禍福終始を知って惑わざる(荀子)

平成31年3月11日

塾長 倉田榮喜